橋梁改修・キャッチクランプ固定部への『メタモルシート#1』の適用事例

メタモルシート#1 は、補修箇所に「貼る」ことでRc-ⅠまたはRc-Ⅱ相当の重防食機能が期待できるシート状の製品(防食シート)であり、部分補修の簡易化、省工程化を図ることで鋼構造物への適切な維持補修の適用を促し、私たちの暮らしを支える社会インフラの長寿命化に貢献したいという思いで開発した製品です。

この思いにご賛同いただき、メタモルシート#1 を補修施工に適用していただいた事例を数回のシリーズに分けて掲載していきます。初回は、四国初の採用事例となった高知県の橋梁改修工事に適用された事例をご紹介いたします。

橋梁改修工事における足場キャッチクランプ部の塗膜損傷

高知市中心部に流れる鏡川に架かる雑喉場(ざこば)橋では、2020年秋より改修塗装工事が予定されていました。事前に当社と塗装会社様で打ち合わせを行った上で、市へメタモルシート#1 を提案したところ、ぜひ新しいことに取り組んでみようと快諾をいただき、今回は足場解体の際に生じる塗膜損傷部にメタモルシート#1 を適用する運びとなりました。

「適切な部分補修」の重要性が高まる社会的背景

そもそもなぜ足場解体の際に塗膜が損傷するのかというと、 橋梁の点検時や改修工事では一般的に仮設足場が組まれますが、その際に使用されるつりチェーン用クランプ(キャッチクランプ)の固定は締め付けが強く、そのストレスによって既存の塗膜が損傷してしまうのです。そして、そこを起点に局部的な腐食が発生しやすくなるという課題が存在していました。

道路の適正な管理や予防保全の強化を背景とした2013年度の道路法改正等を受け、2014年度より全ての橋梁は5年に一度の近接目視での点検が義務付けられるようになりました。また、2019年の(一社)仮設工業会「つりチェーン用クランプの認定基準の一部改正」によりクランプと鋼材の間にはあて物を挟むことが原則禁止となったことから、キャッチクランプ固定部における塗膜の損傷は避けられないものとなっております。

(一社)仮設工業会より引用: クランプと鋼材の間のあて物禁止

雑喉場橋 改修工事におけるキャッチクランプ固定部の状況

(写真)塗装終了後、足場解体中

雑喉場橋の工事は天候にも恵まれ、塗装工程は順調に進みました。キャッチクランプ盛替え先における塗膜損傷は把握していたため、事前にメタモルシート#1 を3cm四方に裁断しておき、足場解体時にキャッチクランプ固定部(盛替え先)の196箇所にメタモルシート#1 を貼り付け、その上に上塗塗装を施しました。

部分補修は、素地調整、メタモルシート#1、上塗塗装という3工程により1日で全工程を終えることができました。同様の仕様を通常の塗料で組んだ場合は、5工程・最短4日間にわたる工事となり、予算的にも非常に厳しいものになっていたでしょう。

塗膜損傷箇所にメタモルシート#1 を適用したことで、雑喉場橋は全面をRc-Ⅰ塗装系と同等の長期防錆性で保護され、今後も高知市民の生活を支えていくことが期待されます。

キャッチクランプ固定部の補修前

クランプ取外し後のボルト痕をケレン
メタモルシート#1(3cm×3cm)の貼り付け
上塗りを塗布

施工に携わった皆様の声

今回、メタモルシート#1 の適用に賛同いただき改修施工を行った塗装会社様からは、「『コの字』にも貼れる事が分かったので、次の小規模物件で役所許可の元、キャッチクランプ固定部へ適用を検討したい。」と、次回以降の採用へ前向きなお言葉をいただきました。(※ご協力頂きました塗装業者様においては、本シートを継続的にご活用頂いております。)

また、市のご担当者様からも「(シートは)もっと硬いと思っていたが想像よりも柔軟性があり、ピタッとくっついていて安心感がある。商品自体が非常に面白く、四国初で新しい事に挑戦できたのは嬉しい。今後、経年的にどうなるか、観察してみたい。」との感想を頂きました。

当社としても、定期的に雑喉場橋の経過観察を行うのはもちろん、部分補修に対しても適切な塗装仕様が適用されるよう提言を継続し、橋梁を中心により多くの鋼構造物の適切な維持管理に貢献したいと考えております。

コ の字型にメタモルシート#1 を貼り付け
上塗り塗装後

老朽化が進行する全国の橋梁とその補修現場の実情

全国に架かる約72万の橋梁のうち10年後にはその半数以上が建設後50年を超えるとされ、老朽化対策の重要性が年々高まっております。

塗装は橋梁の保護に欠かせないもので、ひとたび塗膜が剥離すると水分や酸素の侵入によって鋼材に錆などの劣化が生じます。さらにその錆を放置すると、錆が拡大し橋梁全体を脆く劣化させる原因となります。そのため、僅かな塗膜の損傷であっても適切な塗装仕様による補修を行うべきですが、実際の作業現場では部分補修の作業負担を理由に簡易的な補修にとどまることが少なくありません。

メタモルシート#1の概要