愛知県田原市に所在する鋼橋(歩道橋)改修工事に、大日本塗料の塩害環境向け高遮断塗装システム「タイエンダーシステム」の下塗塗料が採用されました。
海に囲まれ四季を有する日本では多くの地域で塩害を被るにもかかわらず、橋梁をはじめとする鋼構造物への塗装に対して適切な塗装仕様が組まれていないのが現状です。今回は、塩害地域において対塩害仕様の塗装システムが採用された実例から、鋼橋をはじめとする鋼構造物への塩害対策をとる重要性を考えてまいります。
目次
鋼構造物への塩害対策の必要性
塩害が生じるメカニズム
そもそも塩害とは、塩類の存在する環境化において金属の腐食現象が著しく促進される現象を言います。代表的な金属腐食である「錆(サビ)」は、金属に水分と酸素が反応することで生じますが、そこに塩分が加わることで錆の進行速度が高まります。これは、水分に塩分が含まれることで真水よりも電気伝導率が高まり、錆を生じさせる化学反応が早くなることが作用しています。
鋼構造物への塩害対策
しかしながら、塩分濃度が高ければ高いほど錆びやすくなるというわけではなく、ある程度塩分濃度が濃くなると、水分に溶ける酸素濃度(溶存酸素)が低下し、鉄が錆びる速度は遅くなります。では錆が進行しやすい塩分濃度はというと、海水の塩分濃度の約3%における電気伝導率と溶存酸素のバランスが最も錆びやすいとされており、海岸に近い鋼構造物は塩害対策が必須です。海水以外では、冬季に道路にまかれる凍結防止剤に塩化ナトリウムが含まれており、塩害の原因となるため、寒冷地における鋼構造物も同じく塩害対策をとることが望ましいです。
塩害環境における橋梁等の鋼構造物への塗装の現状
鋼構造物への耐塩害塗装は整備が遅れている
上記の通り、海水飛沫が付着する恐れのある塩害地域は腐食のリスクが極めて高く、本来は塩害対策の仕様を組んだ塗装を行わなければいけません。こうした塩害対策としては、工業用塗料分野では、空調機の室外ユニット等の屋外で用いられる電気機器に対しては、製品の早期故障を防ぐ目的から塩害仕様が広く適用されています。
一方で、同様に塩害被害を受ける鋼構造物に対しては下塗りの塗り増し等がなされるのみで、これまで耐塩害をうたった塗装システムがなく、適切な対策が取られないまま塩害による早期腐食を招く事例が後を絶ちません。
塩害地域(渥美半島/海岸から850m)における鋼橋への塗替え
今回、大日本塗料の塩害環境向け高遮断塗装システム「タイエンダーシステム」の下塗りが塗装されたのは、愛知県田原市に所在する鋼橋の歩道橋です。渥美半島の大部分を占める田原市は、太平洋からの潮風による塩害を受けやすい地域です。施工場所は、海岸からの直線距離が約850mという塩害環境であり、歩道橋には深刻な塩害腐食が見られました。当初の仕様は通常の塗替え仕様でしたが、下塗りをタイエンダーに置き換えることでより耐塩害性を高め、防錆力が高まるという点を訴求したことで、採用に至りました。
このように、塩害地域における塗装においても「塩害仕様」を検討されることは少ないのが現状です。タイエンダーシステムはこれまでありそうでなかった、鋼構造物を対象にした塩害対策の塗装システムであり、当社としてはこうした塩害塗装仕様の実績を積み重ねることで、塩害対策の必要性を地道に訴求し、最適な塗装システムを広く提供できるよう努めてまいります。
鋼橋への耐塩害塗装仕様/耐塩害塗装システムの概要
鋼橋への塗装仕様
素地調整: 1種ケレン ブラスト法(ISO Sa2 1/2)
防食下地: ゼッタールEP-2HBスマイル(単品説明書 pdf)
下 塗 : タイエンダー下塗(単品説明書 pdf)
下 塗 : タイエンダー下塗
中 塗 : Vフロン#100Hスマイル中塗(単品説明書 pdf)
上 塗 : Vフロン#100Hスマイル上塗IG(単品説明書 pdf)
タイエンダーシステムの概要
「タイエンダーシステム」は、腐食性物質の遮断効果に著しく優れ、従来品の3倍以上(当社比)の耐塩害性を有することから、塩害が特に厳しい地域=重塩害・強塩害環境下にある金属素材を腐食から徹底的に護ります。更に、低温での硬化乾燥性や幅広い素地適正を有しており、多くの金属素材に対し幅広い環境下でお使いいただけます。
タイエンダーシステムの塩害対策メカニズム
①遮断効果
塗膜内に鱗片状アルミニウム顔料を極めて高い精度で並列配向させることで、塗膜内における酸素や水、塩類などの腐食性物質の浸透を強固に遮断します。
②拡散抑制効果
極めて高い疎水性を特長とする特殊変性樹脂(エポキシ・アミン)から構成される高密度架橋ポリマーを配合することで、侵入した腐食性物質の塗膜内における拡散を抑制します。
③無害化効果
複数の無公害特殊防錆顔料を最適な比率でブレンドし、鱗片状アルミニウム顔料・高密度架橋ポリマーの合間に配置することで、侵入した腐食性物質を無害化し、塗膜下鋼材の腐食侵食を長期間にわたり防ぎます。