メタリック意匠復活に向けた妥協なき取組み |神戸国際交流会館

OMこうべは、ショッピングセンター等の商業施設、神戸市が設置した体育施設・公共施設、ニュータウンの集会所・地域センターなど周辺施設の管理運営を手がけている。昭和44年4月に設立された神戸市の外郭団体である開発管理事業団と、神戸ニュータウン開発センターの二つの外郭団体同士が平成24年10月に合併。翌25年に海上アクセス株式会社が合併して現在の形になった。

OMこうべはショッピングセンターやビルの運営が大きな収入源となっており、管理を手がけるビルを改修し美観を維持することは、テナント誘致において重要なカギを握る。そこで、主要な管理対象のビル「神戸国際交流会館」の外観リニューアルとして、メタリックな外壁を再現するプロジェクトがスタートした。

工期コスト面でメタリック意匠の塗り替えは困難か?

初めての大規模な外壁改修

神戸国際交流会館の竣工は昭和56年。定期的に外壁クリーニングを入れているものの、塗り替えを伴う大きな改修は今回が初めてという状況だった。内部は国際会議場なので常に綺麗にしているが、外壁は竣工後20年くらいから改修の話が出ていたものの、様々な事情で着手にはなかなか至らなかった。塗り替えが本格的に動きだしたきっかけは劣化だ。「当時の塗装はウレタン樹脂系であり、ふっ素樹脂やシリコン樹脂と比べると耐久性が弱い。海風も当たる中、30年以上よく耐えた。」とOMこうべ施設整備課の阪本課長は当時を振り返る。

改修が決まったものの、竣工当時のメタリックな意匠を再現したいという強い希望があり、これが難しかった。メタリックな意匠を再現するとなると、当時あった一般的な技術や材料をもってすると吹きつけ塗装が必要で、施工中の足場や養生などかなり大がかりな施工準備が必要になるうえ、飛散したときの補償を考えるととても現実的ではない。

いっそのこと、アルミパネルの外壁塗装(カーテンウォール)をすべて外し、工場塗装をして張り替える案も浮上した。とはいえ、工期とコストを考慮すると一番合うのがローラー塗装だ。しかしながら、メタリックな塗装を施すとなるとここポートアイランドでの施工には吹きつけ塗装の飛散リスクや養生準備のコストと工数が大きくなる点はどうしても避けられない。

竣工当時のメタリックなデザインの再現へ

OMこうべ施設整備課ご担当者様|Vフロン#200スマイルRBシルバーメタリックこのようにあらゆる工法や塗料を検討した結果、主にコスト面において、現場でローラー塗装しかないという意向にまとまった。また、現在の常識ではメタリック塗料はムラが出やすいため、昭和56年の竣工当初のメタリックな意匠を諦めて、ソリッドの色に変更しようかという話に至った。
その一方で、竣工当時の写真を見ると「当時の設計者の意図を大事にするべき」、「設計当時のイメージを取り戻したい」そんな思いが強くあったものの、なかなか材料も見つからない。検討と苦慮を重ね周囲のビルと比べてもソリッドは選択するべきではないという思いを捨てきれずにいた。
「ここは神戸市にとって一つのランドスケープで、景観がとても大切。どうしてもメタリックな意匠を諦めきれなかった。」と阪本課長は当時を振り返る。安全対策も含めて実現できる技術や材料をとことん探し続けた結果、設計士の協力を得て、ようやく大日本塗料のVフロン#200スマイルRBメタリックシステムにたどり着く。

ローラー塗装可能なメタリック塗料システムを確立!カーテンウォール塗り替え市場への挑戦

2018年9月10日

高い塗装技術を要する中、スムーズにメタリックな外観が蘇る

質感や影の出具合などにもこだわり試験施工を重ね、施工開始ギリギリまで入念な協議が続けられた。残るは実際に作業する職人さんが塗ったことのない新しい塗料を使いこなせるか。選定したメタリックシステムはとても高品質だが、その品質を実現するには均一な仕上がりを得るための施工管理が最大のポイントになる。

その指導も含め、大日本塗料が担当することになった。様々な条件を一つずつクリアし、色むらが出てパッチワークのように見えてしまっていた外装が、見事に蘇った。

神戸国際交流会館(塗替え前)|Vフロン#200スマイルRBシルバーメタリック

Before:30年の時を経て、メタリック意匠は損なわれ渋い灰色でまだらな外観。

神戸国際交流会館(塗替え後)|Vフロン#200スマイルRBシルバーメタリック

After:2017年に塗り替え、竣工当初の意匠メタリックな外観の再現に成功した

神戸国際交流会館(近影・接写)|Vフロン#200スマイルRBシルバーメタリック

ローラー塗装により短期間でキラキラ光るメタリックな外観に蘇った

医療やビッグデータ等、最先端技術の拠点・ポートアイランドの輝きを支える施設を形成

景観に溶け込むメタリック外観

一旦カーテンウォールを取り外して工場等で塗り直すことや、ソリッドカラーへの変更も検討していた中、工事費用や工事期間の問題から現地塗装できるVフロン#200スマイルRBメタリックシステムを採用したことが良い結果となった。「我々は『よしやった』という感想です。元のイメージが再現でき、みなさんの記憶に残っている神戸の街に馴染んでいると思います。ポートピアホテルの隣ですし、山から見える景観、海から見える景観を大事にしていますから」と阪本課長はいう。

優れた意匠によりポートアイランドの発展に寄与

神戸に多くのビルを持つOMこうべ。ポートアイランドでは、iPS細胞を用いた世界初の網膜シート移植手術の実施、国家戦略特区の指定、メディカルクラスター(高度専門病院群等)の形成が進んでいる。特に、医薬品研究施設などでは温度管理も厳しいため、フッ素樹脂での塗装を行っている。

阪神淡路大震災から復活を遂げ、今後も発展し続ける神戸のランドマークであるポートアイランド。そしてその中心に建つ国際交流会館。「国際交流会館はこれからも使い続ける財産ですから」と前出の阪本課長が語るよう、神戸国際交流会館は竣工当時の輝きを取り戻し、国家戦略特区の指定としてメディカルクラスター(高度専門病院群等)の形成のみならず、スパコン「京」の立地など様々な先進プロジェクトが進むポートアイランドの発展に寄与し続ける。

神戸国際交流会館内より|Vフロン#200スマイルRBシルバーメタリック  ポートアイランド|Vフロン#200スマイルRBシルバーメタリック

<株式会社OMこうべ>

  • https://www.om-kobe.co.jp
  • 〒650-0046 神戸市中央区港島中町4丁目1-1 ポートアイランドビル4階
  • 資本金:73億8,850万円
  • 従業員数:109人(平成30年4月20日現在、 株式会社OMこうべホームページより)
  • 事業内容:ショッピングセンター運営、ビル・商業施設運営、海上アクセス運営、体育レクリエーション施設運営、公益施設運営