塗装の前処理として行う素地調整(下地処理)。「ケレン」はその素地調整の中でも重要工程である一方、明確な定義がなされておりません。本記事では、ケレンを行う際に用いる工具とその際のポイントをご説明します。
ケレン作業に使用する道具には動力工具と手工具、大きく2種類に分けられます。1種ケレンではブラスト法を用いますが、それ以外の2種ケレンから4種ケレンで使用する道具は概ね共通です。
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ケレン作業でよく使う動力工具
ディスクサンダー
回転する円盤にサンドペーパーやカップワイヤーホイルを取り付け、塗面に押し付けて研磨することで汚れやさびを落とす工具です。スプリングマシンと呼ばれることもあります。
ブリストルブラスター
ここ3,4年で登場した比較的新しい工具で、先端に取り付けられた縦に回転するブラシで塗面を研磨します。ハンディな動力工具でありながら、ケレン1種と同じ程度の素地調整ができます。ただしブラシの幅がせまく、用途を選んで使うと良いでしょう。
エアハンマー
先端にたがねを取り付けた動力工具で、刃先が叩きつけるように動きます。さびの粗落としの作業などに使います。たがね型の他に針を束ねた針型もあります。
サンドペーパー
目の粗さにより用途が異なります。さび落としには目の粗いもの、汚れ落としや目荒しには目の細かいものを使用します。
カップワイヤーホイル
カップに金属製のブラシが取り付けられたもの。回転させて使用します。
ウォータージェット
高圧で水や温水を噴射して塗膜を剥離させるのがウォータージェットです。振動や騒音が出にくいので利便性が高いように思えますが、大量の排水の処理が難しく対象を選ぶ工具といえるでしょう。
困難な作業を楽にする?!続々登場する便利な最新工具
上記の他にもナルトのような渦巻状の刃がボルト・ナット接合部塗装のケレンに力を発揮する「ケレンマイスター」、リベットを覆うようにかぶせて回転しながら塗膜を落とす「リベットシェーバー」など用途や状況に応じたさまざまなケレン工具が登場しています。
またレーザー、IH、超音波など動力や研磨剤を使用しないケレン技術も次々と開発されています。ただしこれらの技術は、さびが落ちても表面に凹凸をつける素地調整ができず、アンカー効果が期待できないので、やはり動力工具は必要とあります。
ケレン作業でよく使う手工具
電動工具では落としきれなかったさびや塗膜を取り除く際に使用するのが手工具です。
ケレン棒(スクレーパー)
力棒ともいいます。先端についた刃を塗布面に対して約30度の角度で当て、削ぎ落とすよう使います。
ハンマー
先端の尖った部分で層状になったさびや深いさびを叩いて落とします。
ブラシ
ワイヤー状のブラシは落としたさびを清掃するために使います。
塗膜剥離剤
旧塗膜に塗布して化学的に剥離させるのが塗膜剥離剤です。粉塵が舞い上がることがないのでアスベスト・鉛・クロムなどの有害な成分が含まれている旧塗膜の除去に高い効果を発揮します。ただし、剥離剤を使うと剥離した塗膜がぼたぼたと下に落ちます。有害な物質を含む可能性のある剥離した塗膜を適切に処理するのための足場や養生を確実に組むことが前提です。
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