ケレン作業の方法・コツ「鉄骨・鉄筋、コンクリートなどへの素地調整」

塗装の前処理として行う素地調整(下地処理)。「ケレン」はその素地調整の中でも重要工程である一方、明確な定義がなされておりません。主に鉄部への素地調整を指すケレンですが、本記事ではその他の素材に対する素地調整のポイントも含めてご説明します。

素材別のケレン作業

ケレン作業:鉄部(鉄骨、鉄筋、鉄塔、橋梁など)

鉄の構造物に発生したさびというのは人間で言えばガンのようなもの。人間でいう外科手術のように、ブラスト法などでさびを完全に除去することができれば、さび再発の可能性もぐっと下がります。

ケレン作業:コンクリート

コンクリートにケレンをする主目的は粉塵や油分、塩分などの汚れを落とすことです。
コンクリート自体にはさびの心配がない一方、水分を吸収しやすいという性質があります。水分がコンクリートの中に浸透すると苔がついたりして劣化を招き、強度にも影響を及ぼすことがあります。また、コンクリート面に発生したひび割れ(クラック)から内部の鉄筋に水分が届き、鉄筋がさびてしまうリスクもあります。そのため、塗り替え前にはコンクリートの含水率に注意することも必要となります。

ケレン作業:プラスチック

プラスチックは剥離剤などの溶剤を使用すると溶けてしまうほか、工具でガリガリとこすると塗装後も素地調整の跡が残ってしまうといった問題があります。粉塵や汚れなどを除去するに留めることがプラスチックに対するケレンの基本です。

ケレン作業:木部、木材

木材にはさびは発生しないので、表面の汚れや剥離した旧塗膜を除去することを中心に考えます。最終的にはサンドペーパーをかけてから塗料を塗って仕上げますが、このとき、サンドペーパーの役目は木肌をつるつるにすることではありません。しっかり塗料が染み込むように表面に凹凸をつける素地調整が目的なので、あまり目の細かいサンドペーパーを使わないようにすることがポイントです。

ケレン作業:トタン

トタンとは亜鉛めっき鋼板のことであり、亜鉛めっき処理がなされているため鉄よりはさびにくい素材です。とはいえ時間の経過とともに次第にさびていくこともあるため、塗り替えの際には鉄面と同様に、表面に付着した汚れやさびをしっかりと落とすことが基本です。

ケレン作業(番外編):鉛を含有する旧塗膜

鉛やPCBを含む塗料は、有害物質を含有する素材として現在では使用が禁じられております。しかし、かつては汎用的に使用されていたため、現在でもケレンの対象となる旧塗膜に鉛が含有している場合があります。その場合は、足場を組んで剥離剤などを使用し、作業者の安全対策と有害物質を周囲に飛散させないための徹底した手段を講じることが必要となります。

このほか、 高所や狭隘部など物理的にケレン作業を行うことが難しかったり、火気厳禁の場所など環境的に動力工具を用いたケレン作業が困難なケースもあり、素地調整の課題として挙げられます。

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用途別のケレン作業

ケレン作業:床

床というのは人が踏み歩くだけにとどまらず、例えば工場でフォークリフトが通る、トラックが走る、停めた重機から油が垂れるなど非常に過酷な状況下にあると言えます。また、床の材質もさまざまなため一概にコツは言えませんが、塗り替えの際にはコンクリート面と同様に、汚れやさびをしっかりと落とすことが基本です。

ケレン作業:屋根

屋根と一口に言っても、瓦(コロニアル、セメント瓦、釉薬瓦)、金属、トタンなどさまざまな素材が使われています。塗り替えの際には鉄面やコンクリートと同様に、しっかり汚れやさびを落とすことが基本です。

ケレン作業:配管、パイプ

配管のケレン作業についても、鉄面やコンクリート面と同様にしっかりと汚れやさびを落とすことが基本です。しかしながら、配管のように形状が複雑であったり動力工具を使えない箇所はケレン作業を行うことが難しく、このようなケレン作業が困難な箇所の素地調整方法が塗装現場における課題として挙げられます。

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